■胆道
■閉塞
主文
1原告と被告らの間の名古屋地方裁判所平成12年(手ワ)第94号約束手形金請求事件につき同裁判所が平成13年3月30日に言い渡した手形判決を次のとおり変更する。2被告らは,原告に対し,各自,8163万5698円及び内7370万6903円に対する平成13年9月15日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3原告のその余の請求を棄却する。
4訴訟費用はこれを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。
5この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告(1)被告らは,原告に対し,各自,8000万円及びこれに対する平成7年2月28日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)訴訟費用は被告らの負担とする。
(3)仮執行の宣言
2被告ら
(1)原告の請求を棄却する。
(2)訴訟費用は原告の負担とする。
第2当事者の主張
1請求原因(1)被告らは,それぞれ,別紙手形目録記載の約束手形(以下「本件手形」という。)に,拒絶証書作成を免除して,裏書をした。
(2)本件手形の裏面には,第1裏書人A(以下「被告A」という。),第2裏書人株式会社鈴鹿国際ホテル(以下「被告会社」という。),第3裏書人原告,第4裏書人桑名信用金庫との記載(各被裏書人欄はいずれも白地)がある。
(3)原告は,本件手形を所持している。
(4)よって,原告は,被告らに対し,各自,本件手形金8000万円及びこれに対する満期の日である平成7年2月28日から支払済みまで手形法所定の年6分の割合による利息の支払を求める。
2請求原因に対する認否
請求原因(1)の事実は認め,同(2)及び(3)の事実は知らない。
3抗弁
(1)手形法70条3項による消滅時効
ア原告は,平成11年12月30日,本件手形の所持人であった桑名信用金庫に対し遡求義務を履行して,桑名信用金庫から本件手形を受け戻した。
原告の本件手形に基づく被告らに対する手形金請求権は,手形法49条による再遡求であるから,原告が本件手形を受け戻した平成11年12月30日の翌日から6か月後の平成12年6月30日の経過により時効で消滅した。
イ被告らは,平成13年2月27日の本件口頭弁論期日において,時効援用の意思表示をした。
(2)手形法70条2項による消滅時効
ア本訴の提起は,本件手形の満期である平成7年2月28日から1年以上経過後の平成12年9月11日であるから,原告の本件手形に基づく被告らに対する手形金請求権は,手形法70条2項により,時効で消滅した。
イ被告らは,平成12年10月24日の本件口頭弁論期日において,時効援用の意思表示をした。
(3)被告Aによる相殺
ア原告は,被告Aの仲介により,被告会社に対し,平成4年7月29日,三重県鈴鹿市所在のホテルの土地及び建物を代金12億円で売却した(以下「本件売買」という。)。
イ原告と被告Aは,原告が同被告に対して本件売買の仲介の報酬として4200万円を平成7年2月28日限り支払う旨合意した。
ウ被告Aは,原告に対し,平成13年6月5日の本件口頭弁論期日において,上記仲介報酬債権をもって原告の本訴請求債権と対当額で相殺するとの意思表示をした。
(4)弁済供託
ア本件手形の振出人であるB(以下「B」という。)は,名古屋地方裁判所岡崎支部において破産宣告を受け(同支部平成7年(フ)第72号),破産管財人に弁護士Cが選任された。
イ上記破産事件において,桑名信用金庫が債権届出をした本件手形債権(手形金8000万円及び平成7年3月1日から同年5月16日までの法定利息101万2602円の合計8101万2602円の債権届出)に対して371万4467円が配当されることとなった。
ウ破産管財人Cは,本件手形債権につき,桑名信用金庫又は原告のいずれが債権者であるかを確知できなかったため,平成13年9月14日,桑名信用金庫又は原告を被供託者として,上記配当金371万4467円を名古屋法務局岡崎支局に弁済供託した(以下「本件供託」という。)。
4抗弁に対する認否
(1)抗弁(1)アのうち,原告が,平成11年12月30日,桑名信用金庫から本件手形を再取得したことは認め,その余は争う。
原告は,同日,桑名信用金庫との間で,原告が本件手形金額に相当する8000万円を,同日に4000万円を支払い,残4000万円を平成12年2月から平成18年9月まで毎月50万円ずつ分割して支払うことを合意して,同金庫から期限後裏書の方法で本件手形を再取得したものであるから,遡求義務を履行して本件手形を受け戻したものではない。
(2)抗弁(2)アのうち,本件手形の満期が平成7年2月28日であり,本訴の提起が同日から1年以上経過後の平成12年9月11日であることは認め,その余は争う。
(3)抗弁(3)アは認め,同イのうち,原告が被告Aに対して本件売買の仲介報酬の支払を約束したことは認め,その余は否認する。
原告が被告Aに対して約束した仲介報酬額は2000万円であった。
(4)抗弁(4)の事実は認める。
本件供託は,桑名信用金庫又は原告を権利者とする選択的供託であるから,同供託により直ちに原告の本件手形債権に対する弁済効が生ずるものではなく,実際に原告に払い渡されたときに弁済の効果が生ずるにすぎない。
5再抗弁
(1)時効中断及び確定判決による時効期間の変更(抗弁(2)に対して)ア桑名信用金庫は,本件手形の裏書人である被告らに対し,本件手形に基づく手形金の支払を求める手形訴訟を津地方裁判所四日市支部に提起し(同支部平成7年(手ワ)第4号事件),同支部は,平成7年6月14日,桑名信用金庫勝訴の手形判決を言い渡し,同手形判決は同月29日の経過により確定した。
したがって,桑名信用金庫の本件手形に基づく被告らに対する遡求権の消滅時効は,上記手形訴訟の提起により中断した上,同手形判決の確定により,その消滅時効期間は民法174条の2に従って10年となって,同手形判決の確定の日から10年後の平成17年6月29日の経過まで時効消滅することはない。
イ原告は,消滅時効期間が10年に変更された権利としての上記遡求権を期限後裏書により再取得した。
(2)弁済(抗弁(3)に対して)
原告は,被告Aに対し,被告ら主張の仲介報酬債務支払のため,平成4年10月16日,B振出の額面2000万円の約束手形(以下「別口手形」という。)に裏書譲渡し,同手形は決済されたから,仲介報酬2000万円は支払済みである。
6再抗弁に対する認否
(1)再抗弁(1)イは争う。
(2)再抗弁(2)のうち,別口手形が決済されたことは否認し,その余は認める。
第3当裁判所の判断
1請求原因についてア請求原因(1)の事実は,当事者間に争いがない。
イ証拠(甲1)によれば,請求原因(2)の事実を認めることができる。
ウ証拠(甲1,5,8)及び弁論の全趣旨によれば,請求原因(3)の事実を認めることができる。
2抗弁(1)について
(1)原告による本件手形再取得の経緯
証拠(甲1,甲2及び3の各1及び2,甲4,5,8,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告から本件手形の裏書譲渡を受けた桑名信用金庫は,本件手形をその支払期日である平成7年2月28日支払のため呈示したが,資金不足を理由として不渡りとなったこと,原告は,同金庫から本件手形不渡りの連絡を受けたため,同金庫との間で買戻しの交渉をしたが,同金庫は,自ら本件手形を取り立てて手形金を回収するとして,原告による本件手形の買戻しには応じなかったこと,そして,同金庫は,同年3月30日,本件手形の裏書人である被告ら及び原告に対し,本件手形に基づく手形金の支払を求める手形訴訟を津地方裁判所四日市支部に提起し(同支部平成7年(手ワ)第4号事件),原告は同金庫の手形金請求を認諾したが,被告らはこれを争ったため,同支部は,同年6月14日,同金庫勝訴の手形判決を言い渡し,同手形判決は同月29日の経過により確定したこと(以下,この手形判決を「本件確定判決」という。),その後,原告は,同金庫との間で,本件手形の買戻しについて交渉した結果,平成11年12月30日,原告と同金庫は,本件手形について,原告が本件手形金8000万円の支払義務のあることを認め,そのうち4000万円を同日支払い,残4000万円を平成12年2月から平成18年9月まで毎月50万円ずつ分割して支払うことを合意して,原告は,同日,同金庫に対して4000万円のみを支払ったため,同金庫は,無担保の趣旨を明記した上,戻裏書の方法で本件手形を原告に交付したこと,そして,原告は,上記合意に基づき,上記分割金の支払を継続していることが認められる。
(2)上記(1)で認定した事実によれば,原告は,桑名信用金庫から,期限後の戻裏書の方法で本件手形の譲渡を受けたものであって,桑名信用金庫に対し,裏書人としての遡求義務を履行して本件手形を受け戻したものでないことは明らかである。
したがって,原告の被告らに対する本件手形金請求は,原告が本件手形を遡求義務を履行して受け戻した上,原告の前者である裏書人としての被告らに対して本件手形金を再遡求するものではないから,そのことを前提とする被告らの手形法70条3項による消滅時効を主張する抗弁(1)は,その前提を欠き,失当である。
3抗弁(2)及び再抗弁(1)について
(1)上記2に認定説示したところによれば,原告の請求は,原告が,桑名信用金庫から本件手形を期限後の戻裏書の方法で譲渡を受けた上,本件手形の所持人として,原告の前者である裏書人としての被告らに対して本件手形金及び満期日以降の法定利息を遡求するものである。
(2)手形法70条2項,77条1項8号は,約束手形の所持人の裏書人に対する請求権が,無費用償還文句ある場合には,満期の日から1年の経過により消滅時効が完成する旨規定しているところ,被告らは本件手形に拒絶証書の作成義務を免除して裏書した者であるから,原告の本件手形に基づく被告らに対する請求権については,本件手形の支払期日である平成7年2月28日の翌日から起算して1年後の平成8年2月28日の経過により,消滅時効が完成することになる。
しかし,桑名信用金庫と被告ら間には,上記2(1)のとおり,同金庫が上記1年内に提起した手形訴訟があり,かつ,本件確定判決により,同金庫と被告ら間で被告らに対する本件手形に基づく遡求権の存在は判決をもって確定されているから,本件手形に基づく被告らの遡求権の消滅時効は,上記手形訴訟の提起により中断し,本件確定判決の確定の日から再進行することになるが,その時効期間は,本件確定判決により,民法174条の2に従って10年に変更されたものである。
(3)ところで,原告は,本件確定判決後,期限後の戻裏書の方法で,同金庫から本件手形を再取得したものであるから,原告は,同金庫から,上記手形訴訟により中断し,かつ,本件確定判決により消滅時効期間が10年に変更された手形債権としての被告らに対する遡求権を承継取得したものということができる(同金庫の被告らに対する遡求権は,原告の被告らに対する遡求権が原告から同金庫に対する本件手形の裏書譲渡により同金庫に移転したものであり,原告はこれを喪失したのであるが,同金庫から原告への本件手形の期限後の戻裏書による譲渡により,原告が同金庫からこれを承継的に再取得したものと解すべきである。)。
そうすると,本件手形に基づく被告らの遡求義務の消滅時効は,本件確定判決の確定の日である平成7年6月30日から起算して10年後の平成17年6月29日が経過するまで完成しないのである。
したがって,被告らの手形法70条2項による消滅時効を主張する抗弁(2)は失当である。
4抗弁(3)及び再抗弁(2)について
(1)抗弁(3)アの事実及び同イのうち,原告が被告Aに対して本件売買の仲介報酬の支払を約束した事実は当事者間に争いがない。
(2)被告Aは,上記仲介報酬額につき,これを4200万円とする旨の合意があった旨主張し,被告Aの供述及び陳述書(乙1)には同主張に沿う部分がある。
しかし,これら証拠は反対証拠(甲1,6,7,原告代表者)に照らしてたやすく措信し難く,かえって,上記(1)の事実及び証拠(甲1,6,7,乙1,3,原告代表者,被告A本人)によれば,次の事実が認められる。
ア原告と被告会社は,平成4年7月29日,不動産業者である被告Aの仲介で,原告が被告会社(当時の代表取締役はB及び被告Aであった。)に対し三重県鈴鹿市に所在する鈴鹿国際ホテルの土地及び建物を代金14億円で売却し,その手付金として5億円を支払う旨の本件売買契約を締結した。
そして,本件売買契約締結の際,原告と被告Aは,原告が,本件売買の仲介報酬として,同被告に対して3000万円を支払う旨合意し,原告は,被告会社から手付金5億円の支払のために交付を受けたB振出の約束手形のうち額面3000万円の約束手形を,上記仲介報酬支払のため,被告Aに交付した(なお,被告会社は,下記イのとおり,この額面3000万円の約束手形のほか,同手付金支払のためにB振出の額面1億7000万円の約束手形を交付していたが,被告Aが被告会社の代表取締役であったことからすると,被告会社が原告にわざわざ額面3000万円の約束手形を振り出したのは,原告の被告Aに対する仲介報酬支払の便宜を考慮してのものと推認される。)。
イところが,その後の同年10月16日,原告と被告会社は,本件売買につき,その代金を14億円から12億円に減額し,また,手付金を5億円から4億円に減額する旨合意した。
そして,上記手付金の減額方法として,原告は,原告が上記手付金5億円の支払のために交付を受けて所持していたB振出の額面1億7000万円の約束手形と,原告が被告会社から同手付金支払のために交付を受け,仲介報酬支払のために被告Aに交付した額面3000万円の約束手形(額面合計2億円)とを被告らの面前で廃棄した上,被告会社から,新たに,手付金1億円分の支払のためとして,B振出の額面8000万円の本件手形と額面2000万円の別口手形2通の交付を受けた。
ウところで,原告は,本件売買の売買代金額が14億円から12億円に減額されるに伴って,被告Aに支払う仲介報酬も減額されるべきであると考え,被告ら又は桑名信用金庫の立場から本件売買に関与していた弁護士Dを介して,被告Aに対し,同仲介報酬額を2000万円に減額するよう申し入れていたところ,同年10月16日,被告Aに対し,本件売買の仲介手数料の支払であるとして,別口手形に裏書をし,これを同人に交付した。
被告Aは,原告から別口手形を受け取った上,原告に対し,単に「鈴鹿国際ホテル手数料」とのみ記載した,金額2000万円の「領収証」(甲7)を交付したもので,その際,それが仲介報酬の内金あるいは一部として受領するとの趣旨の言動は全くなかった。
エ被告Aは,原告から別口手形の交付を受けた後,原告に対し,仲介手数料の未払分があるとして,その支払を求めたことはなかった。
オ別口手形は,支払期日である平成7年2月28日,支払のため呈示されたが,資金不足を理由として不渡りとなり,現在は,被告Aがこれを所持している。
上記アないしエの事実を総合すれば,原告と被告Aは,本件売買の売買代金が14億円から12億円に減額されることに伴い,本件売買の仲介報酬額を3000万円から2000万円に減額する旨合意し(被告Aが被告会社の代表取締役であったことからすると,本件売買契約の代金額が14億円から12億円に減額することが合意された後において,被告会社が原告に額面2000万円の別口手形を振り出したのも,原告の被告Aに対する仲介報酬支払の便宜を考慮してのものと推認される。),同合意に基づく仲介手数料2000万円の支払のため,別口手形が原告から被告Aに裏書譲渡されたものであり,同仲介報酬2000万円の弁済期は別口手形の支払期日である平成7年2月28日であったものと認めることができる。
(3)そうすると,原告は,被告Aに対し,本件売買の仲介報酬として2000万円の支払義務があり,その弁済期は平成7年2月28日であったところ,別口債権は上記(2)オのとおり決済されずに不渡りとなったのであるから,同支払義務はなお残存しているものである(別口手形が原告の被告Aに対する本件売買の仲介報酬2000万円の支払義務に代えて交付されたことを認めるに足りる証拠はない。)。
(4)被告Aによる相殺とその効果
ア抗弁(3)ウの事実は記録上明らかである。
イところで,原告が本件手形に基づく請求権(手形金8000万円及びこれに対する平成7年2月28日から支払済みまで手形法所定の年6分の割合による法定利息の支払請求権)を取得したのは,上記2(1)のとおり,平成11年12月30日であるから,同日において,被告Aの原告に対する上記(3)の仲介報酬請求権(2000万円及びこれに対する平成7年2月29日から年6分の割合による遅延損害金請求権)と相殺適状となったものであり,したがって,被告Aによる上記相殺の意思表示により,原告の被告Aに対する本件手形に基づく請求権と被告Aの原告に対する仲介報酬請求権とは,同日に遡って,その対当額において消滅したものである。
ウ同日において,原告の被告Aに対する本件手形に基づく請求権は,手形金8000万円とこれに対する平成7年2月28日から平成11年12月30日までの年6分の割合による法定利息2322万4109円の合計1億0322万4109円であり,他方,被告Aの原告に対する仲介報酬請求権は,元金2000万円とこれに対する平成7年2月29日から平成11年12月30日までの年6分の割合による遅延損害金580万2739円の合計2580万2739円であるから,上記相殺の結果,被告Aの原告に対する仲介報酬請求権は全額消滅し,他方,原告の被告Aに対する本件手形に基づく請求権は,民法512条,491条1項に従って,まず法定利息分2322万4109円に充当されて全額消滅し,2580万2739円と2322万41
09円との差額257万8630円のみが手形金8000万円に充当されるため,手形金8000万円のうち同額が消滅し,7742万1370円が残存し,したがって,原告の被告Aに対する本件手形に基づく請求権は,手形金7742万1370円及びこれに対する平成11年12月31日から支払済みまで年6分の割合による法定利息の支払請求権として残存することになった。
そして,被告会社は,被告Aの後に本件手形に裏書したものであるから(上記1ア及びイ),被告Aによる上記相殺の効果は,原告の被告会社に対する本件手形に基づく請求権にも及ぶ。
(5)したがって,再抗弁(2)は失当であり,抗弁(3)は上記(4)の限度で理由がある。
5抗弁(4)について
(1)抗弁(4)の事実は当事者間に争いがない。
なお,上記2(1)の事実並びに証拠(甲1,乙4ないし6,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,破産者Bに対する前記破産事件において,桑名信用金庫は,本件手形の債権者であるとして,本件手形債権につき債権届出をし(ただし,手形金8000万円及びこれに対する平成7年3月1日から同年5月16日までの利息101万2602円の合計8101万2602円として債権届出),債権調査の結果,破産管財人Cの異議なく確定したこと,ところが,同破産管財人が,平成13年3月22日最後配当を実施するため(本件手形債権に対する配当金371万4467円),同金庫に対し,本件手形の持参を求めたが,同金庫は,同日本件手形を持参しなかったものの(同金庫は,上記2(1)のとおり,それ以前の平成11年12月30日本件手形を戻裏
書の方法で原告に譲渡していた。),配当金受領権限を有すると主張したこと,他方,同日以前において,原告が,代理人弁護士を通じて,同破産管財人に対し,原告が本件手形を同金庫から譲り受けて所持しているため,配当金受領権限は原告にあり,同金庫にはないから,同金庫に配当することなく,原告に配当するべきである旨通知し,配当金受領権限を主張するに至ったこと,そのため,同破産管財人は,平成13年9月14日,本件手形債権につき,債権者が同金庫であるか原告であるかを確知することができないと判断して,被供託者を同信用金庫または原告として本件供託をしたことが認められるから,本件供託は,弁済者である同破産管財人にとって本件手形の債権者を過失なくして確知し難い場合になされた適法な弁済供託ということができ
る。
(2)弁済者が民法494条に従って適法に弁済供託した場合には,被供託者に対する債務弁済効は供託によって直ちに発生するから,原告の振出人であるBに対する本件手形に基づく請求権は,本件供託により,平成13年9月14日,本件供託金の範囲で消滅したものというべきである。
そして,約束手形の振出人による手形債務の弁済は,その弁済の範囲で,他の手形債務者の手形債務を消滅させる効果を有するのである。
(3)ところで,本件手形債権についての債権届出は,上記(1)のとおり,手形金8000万円及びこれに対する平成7年3月1日から同年5月16日までの利息101万2602円の合計8101万2602円であるが,上記4のとおり,相殺の結果,原告の被告らに対する本件手形に基づく請求権は,手形金7742万1370円及びこれに対する平成11年12月31日から支払済みまで年6分の割合による法定利息の支払請求権となって,他は消滅したから,被告らとの関係では,上記債権届出にかかる本件手形債権のうち利息分は全額存在しないため,本件供託金371万4467円は,全額,残存する手形金7742万1370円に充当されるべきである。
したがって,原告の被告らに対する本件手形に基づく請求権は,本件供託の結果,手形金残7370万6903円(7742万1370円371万4467円)及びこれに対する平成13年9月15日から支払済みまで年6分の割合による法定利息と,本件供託前の手形金残7742万1370円に対する平成11年12月31日から平成13年9月14日までの年6分の割合による法定利息792万8795円として残存することになる。
第4結論
1以上によれば,原告の請求は,被告らに対し,合同して,8163万5698円(本件供託による手形金残7370万6903円と,本件供託前の手形金残7742万1370円に対する平成11年12月31日から平成13年9月14日までの年6分の割合による法定利息792万8795円の合計額)及び内7370万6903円に対する平成13年9月15日から支払済みまで年6分の割合による法定利息の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の部分は失当として棄却すべきである。2よって,原告と被告らの間の主文第1項記載の手形判決を上記1の趣旨に変更し,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条,64条本文,65条1項本文,仮執行の宣言につき同法259条2項を各適用して,主文のとおり判決する。
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